Saturday, June 20, 2020

新型コロナウィルス、症状進行のプロセスを考える

 かなり前に、新型コロナウィルスの無症候感染の仕組みについて考察したのだが、今回は肺のCTですりガラス影が確認されるあたりまでを考察してみようと思う。
 というのも、肺胞の空気が入る側からの感染は、ないことはないのだろうが、症例などの情報を確認していくと、どうも肺胞の欠陥側から感染、もしくは炎症物質を含む血液が流れ込むことで血漿が肺胞の空気が入る側へと染み出しているケースが多いのではないかと思われ、それをまとめておくべきと考えたからである。

 いつものことながら、私は医療の専門家ではないため、恐らく内容に間違いも多く含まれることになると思う。
 このため、真偽については専門家の意見を踏まえた上で、判断して頂きたい。
 もし間違いに気づかれた場合には、ご指摘ください。

①初期感染
 まず、初期感染だが、ACE2受容体のある場所ならどこでも感染可能と考えている。
 TMPRSS2がなければ膜融合が起こらず感染しないのではないかという話があるが、こちらの資料でSARS-COVではあるがウィルスがエンドソームに取り込まれずに膜融合を起こすパターンが確認されており、私は必ずしも膜融合にTMPRSS2が必要とは限らないのではないかと考えている。
 このため、最初の感染場所は、鼻腔・口腔・気管支を含む気道、目の粘膜、食道あたりになるだろうか。皮膚からの感染は怪我などがなければ、ないのではないだろうかと考えている。
 胃や十二指腸、小腸などでの初期感染もACE2受容体があるという点では起こりえるが、通常は胃酸によってウィルスが不活化されると考えられるため、初期感染は起こりにくいと考えている。

②感染後、おそらく無症候、軽症もしくは中等症まで
 感染後しばらくの間は、自然免疫か何かの力によって局所的に感染が進行する期間があると考えている。
 こちらは、以前のブログにまとめているのでそちらを参照頂きたい。
 37.5℃程度の熱が続く期間も、はっきりとは言えないがここに該当するかもしれない。

③無症候、軽症もしくは中等症から
 感染がさらに進行すると、ウィルス、もしくは炎症物質が血液に乗って流れだすのではないかと考えている。流れ出す量の過多は状況によって変わってくるのではないかと考えてはいるが、現時点でそれを整理できる情報を持ち合わせていないため、これについては機会があれば別途検討したいと思う。
 血液は、必ず心臓を通り肺に至る。至ってしまう。
 肺に至ったウィルスが感染を起こし炎症を引き起こす、もしくは炎症物質が肺に到達することで、血漿が肺胞の空気が入る側へと染み出し、肺サーファクタントと結合する。それにより肺サーファクタントが担っている肺胞の表面張力を緩和する作用が失われ、肺胞が潰れ微小無気肺をとなる。
 この微小無気肺が肺のCTですりガラス影として映っているのではないだろうか。
 この微小無気肺が増えることにより、肺が酸素を取り込み二酸化炭素を排出する能力が低下し、血中酸素飽和度が低下し、呼吸不全に進行していく。
 こちらの症例のCT画像に関する考察が、非常に的を得ているように思う。

 サイトカインストームについては、こちらに非常に詳しい解説があるため、こちらをご参照頂きたい。私から申し上げる点としては、このサイトカインストームは感染症の進行のある時点で、その瞬間からウィルスが全ていなくなったとしてもサイトカインストームが起こる条件が成立し、後にサイトカインストームが起こってしまうため、それが抗ウィルス薬の効果を見えにくくしているのではないかという懸念ぐらいである。

 なお、無気肺については私の主治医の先生より、肺サーファクタントについては岩手県の専門家の方に情報を頂いた。ここに感謝申し上げます。

Saturday, June 6, 2020

新型コロナウィルス、BCGの接種が致死率の低下に関与していない可能性

 BCGの接種(特に日本株)が、新型コロナウィルス感染症に何か良い効果をもたらすのではないかという話をご存じだろうか?
 こちらのブログで、BCGの接種と新型コロナウィルス感染症の広がりの広がりの逆相関と、これらが関係するとしたらどういった要素が考えられるかといったことが紹介されており、非常に興味深い内容となっている。

 今回は、この話を真っ向から全て否定する訳ではないが、少なくとも致死率については例え影響があるとしても、これを第一に取り上げる程は強い影響はないのではないかと思われる情報が出てきてしまったので、せっかくの希望に水を差すようで心苦しい部分もあるが、それを紹介しておこうと思う。

 今回は情報のソースとして、東洋経済オンラインの「新型コロナウィルス 国内感染の状況」を利用させて頂いた。
 非常にわかりやすく情報をまとめておられるため、日本の感染情報を確認する際にはまずこちらを確認させていただいている。
 これだけの情報を維持・管理・公開して頂いていることにつき、感謝申し上げる。

 さて、6月3日時点の「年齢別の感染者数」では、感染者数と死亡者数は以下のようになっており、そこから感染者数に対する死亡率(%)と年齢によって、その前の年齢に対して死亡率が何倍になるかという計算を加えたものが、以下の表となる。

年齢 感染者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 1779 354 19.90 1.95
70代 1682 172 10.23 2.83
60代 1882 68 3.61 5.23
50代 2759 19 0.69 2.03
40代 2658 9 0.34 2.13
30代 2559 4 0.16 -
20代 2786 0 0 -
10代 411 0 0 -
10歳未満 284 0 0 -

 死亡率の上昇倍率が、60代の時に他に比べて大きな値(5.23)となっているが、これは50代以前と60代以降の何らかの違いにより、60代から致死率が跳ね上がっているということを示している。
 それに対して、BCG接種は1951年に開始されているため、これが致死率に大きく影響する前提だと、この跳ね上がりは60代ではなく70代で起こるはずではないかと考えるのだがどうだろうか。
 もし、60代で跳ね上がる今のデータで、さらにBCGが致死率に大きく影響すると言うためには、「BCG接種は1951年に開始されたが、10年程度接種率が低かった」などの条件が必要となるだろう。

 では、60代での跳ね上がりの要因は何かということになってくるのであるが、残念ながらまだそれについて踏み込んだ考察はできていないというのが正直なところである。
 データが不足しているため、確度がいまいちだが、今のところこの年代から跳ね上がる要因のひとつとして私が考えているのは「定年退職」である。
 日本の企業はこの年代を「定年」としていることが多いのではないだろうか。
 定年を迎えた退職者にとって、その後今までとは大きく異なる生き方となることの何かが、致死率に影響してしまっているという可能性を懸念している。
 ただ、この懸念が正しいとした場合、恐らくこの年代での致死率の上昇倍率の跳ね上がりは、かなり男性に偏ると考えられるので、各年代の感染者・死亡者の男女比を、まずは確認するのが次のステップになるだろうか。

 また、他の国々との対比で見えてくることもあるのではないかとも考えている。

 進展があれば、こちらに追記させて頂く。

【2020/06/09追記】
 新型コロナウィルス感染症とBCG接種の逆相関のブログの記事のコメントに本記事の紹介をさせていただいたところ、その著者であらせられる大隅典子女史より以下のコメントを頂戴した。
元の論旨は年代ごとの比較ではなく、日本と他国、あるいは世界の中での比較でした。50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。また、そもそも日本では元の死亡数の数字が少ないので、どの程度、統計的に信頼度の高い比較ができているのかは疑問です。別のブログ記事でも挙げていますが、生物学的背景も、BCGだけではないかもしれませんし、社会的要因も大きいので、単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。
 言い訳を含める形にはなってしまうが、私の考えを述べたいと思う。

 まず、統計的な信頼性の話をする前に、この元データの信頼性についての私の考えを述べたいと思う。
 今回、公表されている感染者数と死者数で傾向を確認するための値を導き出しているのは、それが信頼性が高い数値だと私が考えているからである。
 この新型コロナウィルス感染症は、ご存じの通りクラスター対策などが奏功しているとはいえ、見えない感染者というものが不特定多数存在すると考えるのが妥当であると思われる。
 しかしながら、公表されている感染者数は、ある決まった条件のもと結果的に感染者と判断された方の数であるため、その条件を考慮できれば利用するのに非常に信頼性の高い数値として扱えると私は考えている。

 そのような前提があるものの、死者の数が少ないことによる統計的な信頼性の低さ(例えば、今後感染者が増え続けた場合に、今回述べたような傾向は変わってしまうかもしれない)という点は、ご指摘の通りであると思う。
 しかしながら、BCGの日本株の優位性の考察がなされており、しかも日本のBCG接種は1951年に開始されたということであれば、例え信頼性が低くても、このような考察は行っておくべきではないかと私は考えるのだがどうだろうか?
 これは単に私の意識の問題なので、私の考えを述べるだけだが、私はこれから先このコロナウィルス感染症で統計的に信頼性が高くなるほど、日本の死者数を増やさせるつもりはない。
 そのための分析を今行っているつもりであるし、いつでも根拠を示した情報を提供できるように準備を進めているつもりだ。(そういう意味で、この記事は寄り道にあたるため、今この件に関してはあまり時間をかけて深く踏み込むことができない)
 この情報は、その情報が正しいということよりも、手探り状態のものに対して対応を考える際のたたき台にできる情報というものを目指している。
 日本の医療体制と関係者の質なら、恐らくこの情報で十分であるはずだ。
 そういう訳であるから、死亡者数が少なく統計的に信頼性が高くない情報でも、多角的に見るなどの方法で、信頼性を補っていくことを考えている。
 もちろん、この記事の分析のみで何かを断定することはできないし、したつもりはなかったのだが、もしそのような印象を与えてしまったのであれば謝罪させて頂きたい。
 この情報を起点に、新しい考察を加えて頂けると幸いである。

「元の論旨は年代ごとの比較ではなく、日本と他国、あるいは世界の中での比較でした。」という点については、世界を見る際にも「この国は何年までBCGの接種が行われていた」という情報があり、そういった国についてはやはり世代別の観点で考察を行った方が良いと考えている。
 さらっと確認したところ、オランダフランスの情報が手に入ったので、それを同じような表にすると以下のようになる。
 この表は、オランダは6/6、フランスは6/5のものである。
 フランスについては、残念ながら年代別の感染者数が手に入らなかったので、ひとまず累計入院者と死亡者の傾向比較としてみた。
 そのまま国ごとの死亡率の傾向比較に用いるには問題があるかもしれないが、「50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。」の傾向比較には用いてもよいのではないだろうか。

オランダ(6/6時点)

年齢 感染者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 11049 3720 33.67 1.32
70代 6311 1611 25.53 3.16
60代 6076 491 8.08 4.81
50代 8684 146 1.68 3.29
40代 5490 28 0.51 2.04
30代 4324 11 0.25 3.57
20代 4586 3 0.07 0.47
10代 662 1 0.15 -
10歳未満 150 0 0 -
 オランダは、日本ほどではないが同じように60代のところで死亡率上昇倍率のピークが見られる。

フランス(6/5時点)

年齢 累積入院者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 35707 11001 30.81 1.49
70代 20382 4206 20.64 1.62
60代 17370 2215 12.75 1.91
50代 12970 867 6.68 2.17
40代 7484 231 3.09 1.69
30代 4644 85 1.83 2.14
20代 2455 21 0.86 1.50
10代 526 3 0.57 1.35
10歳未満 711 3 0.42 -
 これをそのまま日本やオランダと比較することはできないが、フランスはどういう訳か死亡率の上昇率の変動が緩やかであるように思われる。
「50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。」の前提である場合、恐らく入院者数と死亡者数の相関にも影響がありそうに思うのだが、それがないように思われる。
 もし、基礎疾患があると入院の可能性が上昇するため、その影響でこの上昇率の変動が打ち消されているということだと、60代で入院者数が大きく伸びるはずだが、確かに大きくは伸びているものの、50代でも同じように伸びているため、60代での死亡率の上昇が打ち消されていると解釈するにはいささか苦しいように思われるがどうだろうか。
 とはいえ、これで何か確定的なことが言えるわけではないので、この辺りを見極めるために追加の考察が必要という話ではあるのだが。

 ともあれ、このような見方をすることで見えてくるものもあるのではないかと、ここでは申し上げておきたい。

「別のブログ記事でも挙げていますが、生物学的背景も、BCGだけではないかもしれませんし、社会的要因も大きいので、単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。」という点について、私の意見を述べさせていただきたい。
 まず、ほかの要素がある可能性についてはもちろん考慮すべきと考えるが、私はそれぞれの要素について、どういう影響があるのかを限られた情報であっても見極めていくことが必要だと考えている。
 特に、どの要素が強い影響を及ぼしているのかを見極め、影響の強さの順を踏まえて論じることができるようになれば、かなり見通しが良くなるのではないだろうか。

 例えば、「ファクターX」について言えば、恐らく今回のように年齢別にして感染者数などを見た場合に、日本では60代以上の感染者数が低く抑えられていることなどの傾向が見えてくるはずだ。(もちろん他のデータを確認した際に、この傾向が否定されたり、もっと影響度が高い要素が出てくる可能性は考慮する必要がある)
 他の年代の感染者数も確かに少なく、日本の満員電車で何故感染が拡大しないかといった興味深い要素はあるものの、全体に対する影響の大きさで見れば高齢化が進んでいるにもかかわらず、高齢者の感染者数が低く抑えられていることの方が大きいはずで、まずはこの要因を分析し、その後その要因を除外した後に次に影響が大きい要因を特定していくといった感じで進めると良いのではないかと考えている。

 最後に「単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。」という点については、「BCGの日本株」がこの感染症の感染率や致死率に強い逆相関をもっているという前提でなければ、全くおっしゃるとおりであると思う。
 逆に「BCGの日本株」がこの感染症の感染率や致死率に強い逆相関をもっているという前提であれば、年代別の比較だけで断ずることは無理があっても、論ずることには無理はなく、むしろこれをきっかけに他の側面からも見るなどの方向に議論が発展しても良いのではないかと考えている。

 以上、頂いたコメントを網羅する形で考えを述べたつもりだが、ご理解いただける内容になっているだろうか?
 年代別に見るということについては、ぜひご検討いただきたい。

以上。

Tuesday, May 19, 2020

新型コロナウィルス、投薬の組み合わせがハマったかどうかは投薬開始後3日(投薬日含めると4日)以内に確認できるのではないかという話

日本感染症学会様で、新型コロナウィルス感染症の症例が症例報告という形で公開されていることはご存じだろうか?
今回、新型コロナウィルス感染症をもっと詳しく知ろうと考え、この症例報告のうち、5月19日までのもの(223症例うちハマったかどうかを判断できた症例134)を全て読み込み、とりあえずざっくりデータ化し傾向を考察してみたところ、タイトルにある傾向が確認できたため、それについて述べたいと思う。

症例公開という場を設けて下さいました日本感染症学会様、並びに多忙にも関わらず症例を公開して下さいました医師の方々、症例の公開に同意下さいました患者様ならびにご家族の方々に深く御礼申し上げます。また、不幸にも亡くなられた方々のご冥福を、心よりお祈りいたします。

さて、私は医療関係者ではないため、医療として間違っていることを記載している可能性があることを、まずはお断りさせて頂きたい。要は、これから私が述べることを、まずは疑いの目を持って見ていただきたいということである。

次に、私がこれから述べることの基礎となるデータ(症例報告)の特性を、ざっくりではあるが列記しておこうと思う。

  1. この症例報告は任意報告であるため、報告例に偏りがある可能性があり、治療で利用する薬剤を統計的に選択する用途には不向きである可能性がある
  2. これまで経験したことがない症例の共有のための報告が比較的多い(普通がどうかはわからないが)ように思われる(パターン網羅性が高い可能性)
  3. 30歳以上、90歳未満の方の症例が多い(10歳未満:1、10歳代:0、20歳代:5、30歳代:18、40歳代:15、50歳代:21、60歳代:33、70歳代:25、80歳代:23、90歳以上:0)
  4. 薬剤は、現在のところファビピラビル、シクレソニド、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビルを投与した症例が多い(ファビピラビル:52、シクレソニド:46、ヒドロキシクロロキン:30、ロピナビル・リトナビル:42)
  5. 日本人の症例が多い(日本人以外:11)
  6. 重症度(最重症時)は、抗ウィルス薬を投与開始するレベルから人工呼吸器管理を行うレベルまでの症例が多い(ECMO管理は除く)(無症候:0、軽症:1、中等症:42、重症:56、重篤:32、他界:10)
  7. 男性が多いが女性も少なくはない(男性:91、女性:47、不明:3)

つまり、以下に述べることは、特に3.から7.までの条件に限定される可能性がある。(例えば4.に述べた4つの薬剤以外の薬剤にはあてはまらない可能性がある)

上記の症例を、データとして扱うために、年齢、性別、既往歴などの情報を抜き出してまとめ、治療で用いられた薬を発症日もしくはPCR陽性判明日を基準とした日数をベースに時系列で履歴化した。
さらに投薬による症状の改善を見るために、改善傾向が見られる直前に投与された薬を書き出していったところ、投薬によるものと思われる症状の改善は、投薬開始から3日(開始日も含めると4日)以内に極めて集中しているという傾向があった。これは、投薬開始直後から改善が見られるケースもあれば、投薬開始からしばらくは悪くなり続け、その後に改善するというケースもあり、改善の仕方は一様ではないのだが、改善が見られる場合は3日以内に確認できるという点は共通していたのである。これは、新型コロナウィルス感染症に対する治療として、データの特性の中で述べた、日本人で、30歳以上、90歳未満のどの年齢でも、ファビピラビル、シクレソニド、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビルのどの薬剤でも、抗ウィルス薬を投与開始するレベルから人工呼吸器管理を行うレベルまでのどの重症度でも、性別、基礎疾患に関わらず共通しているように思われる。また、症例の中には少ないながらも日本人以外の方の症例も含まれており、同じ基準での考察が可能であったことから、海外の症例を分析することで同様の傾向が確認できるかもしれない。
ただし「投薬によるものと思われる症状の改善」は、症例に記載された文言から私が判断したものであるので、判断の妥当性はこれを読まれた方々によってチェックされるべきである。

ある投薬の組み合わせを開始してから、症状の改善が確認されるまでの日数の分布は以下のようになっている。ほとんどの症例が3日以内に集中していることがお分かりいただけるだろうか。著効したから報告したという症例が多いということを考慮したとしても、それでもなお集中しているように思われる。

日数 0日 1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日以上 他界
4薬剤使用ありの症例 19 21 17 10 5 1 2 2 0 1 4 8
4薬剤使用なしの症例 6 10 3 3 2 0 1 0 2 0 0 2


ここからは、「投薬によるものと思われる症状の改善は、投薬から3日(開始日も含めると4日)以内に極めて集中している」ということが正しいことが前提となるが、これがわかると何が言えるかというと、「投薬がハマったかどうかを確認するために4日(開始日も含めると5日)以上様子を見る必要はないのではないか」ということである。
3日以内に投薬を変更してはならないということではないので、その点は誤解しないで頂きたい。

また、「投薬がハマったか」という表現を使っているのは、その直前に投薬を開始した薬剤のみが著効しているとは限らないが症状の改善がみられる、ということを表現したかったためである。

例えば、ある症例では、
Aという方が、1という薬で改善が見られなかったが、2という薬を追加したところ改善した
別の症例では、
Bという方が、2という薬で改善が見られなかったが、1という薬を追加したところ改善した
というようなパターン(もっと複雑なものもある)が、いくつも見受けられる。

だがこれをもって、Aという方の状態には2という薬が著効し、Bという方の状態には1という薬が著効したと言えるだろうか?
恐らくは、それを判断する前に、1と2が何かを補完しあっているのではないかということも、考察する必要があるのではないだろうか?
また、1という薬をやめて2という薬を始めて改善が確認された場合でも、同じような考察が必要になるのではないかと考えている。
このため、投薬の組み合わせを変更し、症状の改善が見られることを「投薬がハマった」と表現することにしたのである。

とにかく、ここで述べたいことは、私が述べていることがもし正しいと確認できた場合には、ある投薬の組み合わせを開始して、症状の改善が確認できないまま3日(開始日も含めると4日)が経過した場合、4日(開始日も含めると5日)目からは異なる投薬の組み合わせ(薬の追加を含む)で治療を行うことを、検討してみて頂けないだろうかということである。

この情報が、新型コロナウィルス感染症治療の一助となれば幸いである。

なお、私がこの検討の際に使用した症例要約などは、日本感染症学会様にお送りしているので、その資料が必要となる場合にはそちらから提供を受けて頂きたい。(資料「①症例毎の投薬のサマリ20200430迄.pdf」もしくは「②投薬が著効した可能性を認める症例20200430迄.pdf」の中の各症例の「発症から改善傾向確認までの間隔」という項目に、私が改善傾向と判断したポイントを記載している)
また、その資料を利用する場合には、各症例報告の著作権が各症例報告の著作者に帰属しているということに留意して頂きたい。

Friday, May 8, 2020

プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、新型コロナウィルスの時を止めるか

 私は医療関係者ではないため、情報に誤りや不正確である部分もあるかと思われる。もしそういった部分に気づかれた方は、コメントにてご一報いただきたい。

 さて、紆余曲折あり、ここに行きついた。
 原理として考えているのは、こちらの記事に「小胞の中が次第に酸性化し、ウィルスのスパイクを介して小胞とウィルスの膜が融合」とある部分について、新型コロナウィルスでも、エンドソームの酸性化を抑制することによりウイルスRNAの細胞質への侵入を遅延させる可能性があるのではないかということである。

 ただし、プロトンポンプ阻害剤は「胃の壁細胞のプロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬である」(Wikipedia)(通常はその為に使用する)ため、「胃酸による殺菌作用が抑制される結果、腸内細菌叢の変化を引き起こし小腸の炎症が増強される事が報告されている」(Wikipedia)などの懸念があることに十分注意して頂きたい。
 そのような薬が何故アメリカでは市販されているのか理解できていないのだが、医師による管理が必ず必要となる薬であるという認識である。

 また、遅延効果というのは、つまり感染症を治すためにはほかの薬を利用するか、免疫によりウィルスが排除されるのを待つ必要があるということである。
 その上で、遅延効果があったかということの評価は、遅延効果がなくとも新型コロナウィルス感染症は重症化しないケースがほとんどであることから、そういったケースを除外できる評価基準もしくは評価法でなければ評価ができない。(悪い結果であっても、他の要因の可能性を除外しきれない可能性がある)
 つまり、現時点で闇雲に試すのは百害あって一利なしとなる可能性があり、慎重な判断が求められるということを、まずはご理解いただきたい。

①上記前提を踏まえた上で、まず上で述べた原理についての可能性について述べたいと思う。
 この原理は、プロトンポンプ阻害剤が、その名の通りプロトンポンプを阻害するために利用するものであるが、エンドソームの酸性化もまたプロトンポンプによって行われている(Wikipedia)ため、こちらも阻害するという前提が必須である。
 だが、話はそう単純ではなく、胃酸を産生するプロトンポンプはH+,K+-ATPaseというものであり、エンドソームの酸性化を行うプロトンポンプはV-ATPaseというもので、全く同じものというわけではない。
 そのため、薬の作用がH+,K+-ATPaseに特異的(薬の本来の用途としてもその方が望ましいはずである)であれば、上記の原理は前提が覆り成立しないことになる。

 そのため、この点について情報を蓄積していこうと思う。
 まず、確認できたのは、がんの治療の際にプロトンポンプ阻害剤を使ってV-ATPaseを阻害することで、抗がん剤などの効果を高めることができないかという研究の情報である。
 Influence of the proton pump inhibitor lansoprazole on distribution and activity of doxorubicin in solid tumors
 がんのアルカリ療法

 次に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪予防のためにプロトンポンプ阻害薬を利用する研究の情報である。こちらは、エビデンスの強度については別途考察が必要と思われるが、臨床試験が行われており、興味深い結果となっている。
 A new strategy with proton pump inhibitors for the prevention of acute exacerbations in COPD

②次に新型コロナウィルス感染症で評価を行うにあたり、どのような評価が可能かを検討したいと思う。

 まず、以下のようにある集団において、個々人の様々な条件を組み合わせながら、傾向を探るというのは、一つの方法ではあると思う。つまりある集団の中で、プロトンポンプ阻害剤を利用しているグループに、重症者が少ない傾向などがみられるかを確認する方法である。こういった情報を他で見つけられた方がおられたら、コメントにてご一報いただきたい。
 Interest of Proton Pump Inhibitors in Reducing the Occurrence of COVID-19: A Case-Control Study

 上記のようなことは、私には行うチャンスが今のところないので、私は私で公開されているコロナウィルス感染症の症例から、プロトンポンプ阻害剤の処方を受けている方の情報を考察し、何か特徴的な何かがないかを確認し、以下に追加していこうと考えている。もし、プロトンポンプ阻害剤の処方を受けている方の症例を見つけた方がおられたら、コメントにてご一報いただきたい。
【2020/05/24追記】
 現在、日本感染症学会様で公開されている新型コロナウィルス感染症の症例報告を全て読み込んだが、プロトンポンプ阻害剤を常用薬としている方がそうでない方と比べて明確な違いは認められなかった。
 一方、こちらの症例報告では、ヒドロキシクロロキンでの治療に加えて、重症者にはプロトンポンプ阻害剤を投与しており、それが関係しているかどうかは現時点では何とも言えないが、細菌性肺炎の合併で亡くなった方がおられた他は、非常に良い結果となっている。しかしながら、30症例の治療の各詳細が分からないため、この結果を十分に検証することができない。ヒドロキシクロロキンもまたエンドソームの酸性化を抑制する(pHを上昇させる)働きがあり、プロトンポンプ阻害剤との相乗効果を確認できる好例だと思われるだけに、残念である。

なお、エンドソームの酸性化を抑制するということでは、液胞型プロトンポンプ阻害剤というものがあるようなので、そちらの情報も収集していくことを考えている。
【2020/05/24追記】
 確認してみたのだが、液胞型プロトンポンプ阻害剤でこの用途で利用可能に思えるものはなかった。(細胞毒性などの理由)

Friday, April 10, 2020

新型コロナウィルス、肺胞での防御機構を考える

前回、粘液の性質を変えるアイデアを考えていた際には、肺胞には粘膜がないということが考慮できていなかった。(喀痰が肺胞にもあることを考えると問題ないのかもしれないが)
予防の観点で極力穴がないようにしておきたいため、今回は肺胞において新型コロナウィルスに対抗するための方法がないかを検討したいと思う。

そう考えて、肺胞の構造をインターネットで調べていたのだが、肺胞には既に薬で性質の付与を行わなくとも、新型コロナウィルスのエンベロープを破壊する可能性のある分泌物が分泌されていることが分かった。
それは、「肺サーファクタント」というもので、肺胞の内面全体に薄く広がっているものと推定(今のところ私の想像なので、要確認)される。「肺サーファクタント」の成分のほとんどは界面活性剤で、その役割はWikipediaには「表面張力によって肺胞内から空気が虚脱するのを防ぐために、肺を持った動物は、界面活性剤が持つ性質の1つである表面張力を緩和する作用を利用すべく、肺胞内に肺サーファクタントを分泌している」とある。
「肺サーファクタント」の成分のほとんどが界面活性剤なら、肺胞の内側からウィルスが感染しようとした場合、その過程で「肺サーファクタント」を通過しようとした際に、界面活性剤の効果によりエンベロープが破壊され、ウィルスは不活化されるのではないだろうか?
もしくは「肺サーファクタント」が細胞に対して吸着する(私が確認したソース)のと同じように新型コロナウィルスのエンベロープに吸着し、肺胞上皮細胞に対する感染力を失わせているのではないだろうか?(この場合は、「肺サーファクタント」と吸着された新型コロナウィルスが肺胞マクロファージに貪食された場合、新型コロナウィルスが不活化されるのか、逆に肺胞マクロファージが感染されてしまうのか、もしくは肺胞上皮細胞に吸着した「肺サーファクタント」と反発してマクロファージに貪食されず、呼気と共に外に放出されてしまうのか、あるいはそれ以外のことが起こるのかについて確認が必要)
つまり、前々回お話させて頂いた「獲得免疫ができるまでウィルスを食い止める堤防の役目」を、この「肺サーファクタント」が行っていることになるだろうか。(もし不活化までしているとなると、獲得免疫ができるのを待つまでもなく、肺胞からはウィルスがいなくなってしまうかもしれない)

①「肺サーファクタント」は、肺胞の内側全体を覆っているのか(覆っていない部分があるのか)
②「肺サーファクタント」に、新型コロナウィルスのエンベロープを破壊する力はあるのか、もしくは「肺サーファクタント」が細胞に対して吸着する(私が確認したソース)のと同じように新型コロナウィルスのエンベロープに吸着し、肺胞上皮細胞に対する感染力を失わせることができるのか
③「肺サーファクタント」の分泌量は、加齢により低下するのか
上記3点は、専門家に確認しないことには、正しい情報を得ることができないため、まずは何としても確認してみようと思う。
もし、上記がいずれも想定通りなら、「肺サーファクタント」の分泌を促すことで、新型コロナウィルスの肺胞内部からの感染の可能性を、少しでも下げられるかもしれない。(※「肺サーファクタント」は分泌過剰でも問題を起こす可能性(私が確認したソース)があるようなので、必ず医師や薬剤師の管理を受けること)
【2020/04/25追記】「肺サーファクタント」の分泌を促すことが感染の可能性を減らすことにつながらないことについて、末尾に追記したのでご確認頂きたい。
ただし、新型コロナウィルスが、肺胞内部からではなく、例えば血流に乗って肺胞に感染しようとした場合などには、「肺サーファクタント」は役に立たない可能性が高いと思われるため、過信は禁物である。あくまで、可能性のひとつを極力小さくするというイメージになるだろうか。
【2020/04/26追記】
以下のリンクでは、血中の好中球が活性化されることで、肺サーファクタントが不活化されるケースが記載されている。
http://rods777.ddo.jp/~s002/tisiki/surafactant/mechanism1.html


もし、「肺サーファクタント」が年齢により分泌量が減少していくのなら、新型コロナウィルスの致死率が年齢が高くなると高くなるという傾向に、少なからず関与しているのかもしれない。

上記①②③については、専門家から情報が得られ次第ここに追記する予定なので、期待しないで待っていて頂きたい。(今のところ専門家は皆様冗談抜きでお忙しいようで、私ごときの戯言にお付き合いいただくのはなかなかに難しく)
このブログを読まれた方で、もし呼吸器の専門家に確認する機会に恵まれた方がおられたら、是非この件を確認して結果をコメント頂きたい。

【2020/04/21追記】
①について、以下リンクのドキュメント(かなり古い)により、肺胞の内側全体を覆っているようだということが確認できた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrs1963/10/11/10_11_581/_pdf/-char/ja
この資料では肺サーファクタントが末梢気道でも分泌されている可能性にも言及されており、肺サーファクタントの分泌を促すことで、限定的ではあるが前回の薬の開発で行おうとしていたことが実現できる可能性が出てきた。院内感染などの対策のひとつとして利用できると良いのだが、こちらもやはり専門家に確認しないことには、最悪の場合逆効果となる可能性もあるため、素人判断は危険である。
肺サーファクタントがエンベロープに吸着するケースを追加。
確認すべき内容に③を追加。
肺サーファクタントの過剰分泌の問題について記載。

【2020/04/22追記】
以下のリンクで、肺サーファクタントの成分がインフルエンザA(H1N1)pdm09に高い親和性で結合し、組織培養において感染細胞から非感染細胞へのウイルスの拡散を阻害することが示されている。また、マウスに1000プラーク形成単位(pfu)の典型的な致死量の(H1N1)pdm09を投与した場合の結果には驚かされる。
臨床で確認されたデータではないので、必ずしも人の体で同じことが起こっているとは言えないとは思うが、インフルエンザAウィルスもエンベロープを持つウィルスであり、インフルエンザAウィルスと新型コロナウィルスのエンベロープの由来(例えば細胞膜由来など)が同じであれば、同様の現象が起こる可能性を多少は考慮しても良いものなのだろうか?
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/31882535

【2020/04/25追記】
幸いなことに、専門家(岩手県)の方の意見を伺うことができた。
肺サーファクタントは、通常の状態であればウィルスに対するバリアの役割を果たしている可能性(エビデンスがないので、あくまで仮説であることに注意して頂きたい)はあるが、気道上皮細胞などで感染が起こり、炎症が起こると、血清成分の染み出しが起こり、それが肺胞に流れ込んだ場合、肺サーファクタントの(表面張力に対する)機能を破壊するため、少なくともそのケースでは同じように肺サーファクタントはバリアの機能も果たせないであろうと。(つまり肺サーファクタントの分泌促進には、この件に対して意味がない可能性が高い)
このような時期にもかかわらず、ご対応いただいたことに感謝を申し上げたい。
今回のケースでは、私は血清成分の染み出しにより肺サーファクタントの機能が(アルブミンなどと結合することにより)破壊されるという情報を得ていたにも関わらず、それが気道から流れ込むパターンをイメージできていなかった。

以下は、私の考察であるため、少し強引な仮説になるがご容赦頂きたい。
肺サーファクタントがバリアの機能を果たしている前提では、そのままの機能を維持するには、炎症による血清成分を肺胞に流入させないことが重要でありそうである。
例えば前回考えた薬でも、それが可能であるように思われる。
ただし、以下の考慮は必要となるだろう。
・その薬そのものが炎症を引き起こさないこと(つまり細胞膜にダメージを与えることは許容されない可能性が高い)
・エンベロープを破壊されたウィルスが炎症を引き起こさないこと(感染前にエンベロープを破壊できる場合は、ウィルスの量が少ないため、例え炎症を起こすとしても、こちらの条件は無視できる可能性はあるかと思う)
肺サーファクタントの分泌云々は、少なくともこれが達成できている状態でないと考える意味がないようである。

また、今回情報が補完されたことにより、1パターンに過ぎないが、無症候感染から肺胞上皮細胞への感染まで、仮説に連続性を持たせることができたので、それに対してどういったアプローチが可能かを検討しようと思う。

Wednesday, April 8, 2020

新型コロナウィルス、パンデミックを一気に終息させるレベルで有効な薬を考える

前回、新型コロナウィルスが無症候の状態で他者に感染させる仕組みを考えた。
この過程が正しいとした場合、どのような薬があればパンデミックを一気に終息させることができるだろうか?

まず、ワクチンが開発されて実用化されれば、パンデミックは終息するだろう。
課題としては、以下のようなものがあるだろうか
①世界中に行き渡らせるための量産体制をどのように構築するか
②新型コロナウィルスの変異に対して包括的に効果があるか
③抗体依存性感染増強(ADE)など、副作用の問題はないか
①に対しては、欧米が多大な投資を行っているというニュースなどが簡単に検索でき、
③に対しては、実用化に至るまでの段階で可能性を減らしていくことになるだろう。
②に関しては、検証の段階で各地からウィルスを収集し、効果の検証を実施するのではないだろうか。

それ以外に例えば、自然免疫の増強でウィルスの侵入を食い止め、同時に血漿療法でウィルスを攻撃しすれば、感染期間を一気に短縮できるかもしれない。
ただし、この場合何らかの方法で感染を検知しなければ血漿療法を始められず、無症候で感染を広げるということはなくならないかもしれない。(血漿療法が既に予防的に利用できる、もしくは利用できるようになればこの問題をなくすことができると考えられる)
次に、ウィルスは常に変異を繰り返しているため、それでも同じ抗体が同じ効果を発揮し続けることができるかという問題である。これはもし同じ効果を発揮しないとなった場合には、何かそれを補う手段が必要になるが、例えばもっと技術を前に進めて、ウィルスの遺伝子からウィルスの異変までを予測し、必要なバリエーションの抗体をデザイン、精製、投与できるようになることで解決できるのではないだろうが。
上記の想定は、私の不勉強もあり、正確性を欠いている可能性があることをご留意頂きたい。(ご指摘いただければ、修正いたします)

さて、カルボシステインという薬をご存じだろうか?
Wikipediaでは「喀痰の粘稠度(ねんちゅうど)を下げ、その排出を容易にする。」とある。私はこれを粘膜から分泌される粘液を変質させていると理解しているのだが、あっているだろうか?
薬で粘液を変質させることができるなら、粘液にウィルスのエンベロープを破壊する性質を付与することはできないだろうか?
つまり、自然免疫がウィルスの侵入を粘膜で食い止めている間、粘膜表面の細胞で増殖したウィルスが細胞から出てきたところで、粘液によりエンベロープを破壊し不活化するのである。
ボウフラの湧いている水たまりの上に、蚊取り線香の煙を充満させておくようなものと言えば、少しはイメージしやすくなるのだろうか。
このタイプの薬であれば、予防としてあらかじめ服用しておくことができるように創薬することはできるのではないだろうか。
この方式だと、外の世界から侵入しようとやってくるウィルス、粘膜表面の細胞で増殖したウィルス、どちらにも対応が可能であるため、必然外へ出ていき他者へ感染するウィルスも激減すると考えられる。
なお、粘膜に障害があり粘液にむらがありそこからウィルスの侵入を許したり、健康でも粘液による破壊を免れて粘膜に感染するウィルスは0ではないはずなので、過信は禁物である。
また、抗生物質における耐性菌のように、ウィルスが何らかの耐性を持ちエンベロープの破壊を免れたり、エンベロープを破壊されても活性を維持し続けるようになる可能性は当然考えておかねばならず、例えこの薬が著効したとしても、他の薬の開発や検証は続けなければならない。バックアッププランを充実させておくことは重要である。

【2020/04/10 追記】
また、粘膜は肺胞にはないようなので、この方法で対応できるのは気管支までであると考えた方が良いだろう。カルボシステインが「喀痰の粘稠度(ねんちゅうど)を下げ、その排出を容易にする。」ということなので、それと同じであれば喀痰が肺胞にもあることを考えると問題ないのかもしれないが。
肺胞における、新型コロナウィルスに対する防御方法については、次回考察する。

ただ、ウィルスのエンベロープは、こちらもWikipediaによると「エンベロープは、ウイルスが感染した細胞内で増殖し、そこから細胞外に出る際に細胞膜あるいは核膜などの生体膜を被ったまま出芽することによって獲得されるものである。」とあり、[ウィルスのエンベロープを破壊する性質]≒[細胞の細胞膜を傷つける性質]であり、薬にするためには以下のようないずれかの対応が必要となるだろう。
①ウィルスのエンベロープを破壊するのに十分な薬の強度を見極め、薬が過剰な破壊力を持たないようにコントロールする
②何らかの方法でウィルスのエンベロープにしか作用しないように細工をする(例えば、細胞の大きさに比べ、ウィルスがはるかに小さいことを利用して、ウィルスのサイズの球形の脂質二重層を検知して働くようにしておくなど)

創薬には上記のような課題があるものの、逆にエンベロープが感染した細胞由来であるということは、ウィルスが変異を繰り返しても、エンベロープはその影響を0とは言えないまでもほぼ受けないということであり、ウィルスの変異に対するもぐらたたきのような対応からは開放されるのでないだろうか?

また、今のところ私の勝手な妄想だが、この薬には以下のような特徴があると考えられ、パンデミックのような状況での利用にも耐えるのではないだろうか。
・錠剤化できるため、保管・輸送が容易
・今まさにウィルスに高濃度で暴露されているような状況・空間であっても、取り扱いに注意する必要がなくすぐに利用可能
・量産を行いやすい(生成方法さえ確立してしまえば、恐らくかなりの数の製薬会社で製造が可能)
・製造コストが高くならないため、薬価を低く設定できる
・最前線で戦う医療スタッフにも予防のために必要とされる薬であるため、一般の臨床試験とは比較にならないほど的確なフィードバックを得られる

当然、安全な創薬のために、臨床試験に至るまでに多くのステップが必要になるはずなので、それは抜かりなくクリアして頂きたいが、並列で評価できるものは並列化し、なるべく期間を短縮するということも検討して頂きたい。

なお、この薬は、治療に用いるという用途では、粘膜に付着しているウィルスを不活化する、外に吐き出されるウィルスを減少させるという効果は期待できるが、内部に侵入したウィルスには無力であることに、くれぐれも留意頂きたい。

対して、この薬は、医療従事者、介護従事者がウィルスに暴露される可能性がある場合、もしくはウィルスを他者に感染させてしまう可能性を下げる必要がある場合に、予防的に用いることができると考えている。
また、パンデミック、エピデミックにおいては、外出を要する者が、予防的にこの薬を服用することで、パンデミック、エピデミックを一気に終息させることができるのではないかとも考えている。
これらの用途には、前回の仮説か正しいか否かに関わらず使用できるはずだ。

ここでまた注意事項となるが、この薬はあくまで粘液があることで効果を示すことを想定するものであり、粘液が乾燥するような環境では十分な効果が得られない可能性がある。このため、薬のみで十分だと考えるのではなく、マスクなどと併用し(マスクの場合は、マスクそのもののウィルスに対する効果に加え、マスクによる保湿効果による粘液のうるおいの維持が期待できる)、相乗効果でウィルスと向き合うということを考えて頂きたい。

いかがだろうか?
この薬は本職の医療関係者から見て、実現の可能性のあるものに映っているだろうか?
また現在検討されている、様々な薬や手段があったとしても、この薬は有用であると考えられるだろうか?
一般の方にとっては、お騒がせして申し訳ないが、この薬はまだ実在せず、私が夢の薬(つまり効果も何もかもが妄想)の話をしているだけとご理解いただきたい。

Tuesday, April 7, 2020

新型コロナウィルス、無症候の状態で他者に感染させる仕組みを考える

どういうことが起これば無症候の状態で他者に感染させるということが起こるだろうか、ということを考えてみた。

あくまで一つの可能性だが、このウィルスに感染して無症候の状態というのは、体の中の何かがウィルスを駆除しきるということはできないものの、何か堤防(あくまでイメージ)のように働き、ウィルスの侵入(あくまで例え)を防いでいる状態というのが考えられるのではないだろうか?
そして、他者に感染させるというのは、ウィルスが堤防の外側(あくまでイメージ。ウィルスが自己増殖できるという意味ではないので注意。恐らく粘膜における、上皮や神経細胞のアポトーシスと再生が繰り返されるのではないだろうか)で増殖し、それが外の環境にばらまかれていると考えると辻褄が合うような気がするのだがどうだろうか?

もし、堤防(あくまでイメージ)のようなものがあるとしたならば、その役割をする可能性のあるものの候補筆頭は、自然免疫(のうちのどれか、もしくは複合的な働き)ではないだろうか。
つまり、無症候の感染者の体では、まず自然免疫がウィルスの侵入を食い止め、獲得免疫ができた段階でウィルスを駆逐していき、自然治癒するという過程をたどるのではないか。
そして、どれ程ウィルスが増殖したか、どの場所で増殖したかで、クラスター感染が起こるかどうかが変わってくるのではないか。(増殖場所によっては検体にウィルスが付着せず、PCRで検知できない可能性があるのではないか)

上記の仮定が正しい場合、このウィルス感染症は自然免疫力を高めることにより、重症化率を下げることが可能になる特性を持つ可能性が出てくる。
重症化後に自然免疫力を高めることが有効かどうかは、ウィルス侵入後に自然免疫がウィルスを押し返す(あくまでイメージ)ような働きをするのかどうかで変わってくると思われるので、仮説を検証するにあたり、そういった見極めも必要だろう。

また、ウィルスの侵入を許すケースとしては、少なくとも以下のようなパターン(あくまで素人考え)があることが想定されるため、それぞれの状況に応じた治療計画が必要になってくるかと思われる。
・ウィルスの増殖や年齢による自然免疫力の低下などにより、堤防の高さ(あくまでイメージ)が足りず、ウィルスの侵入を許すケース
・基礎疾患などによって、堤防に決壊箇所(あくまでイメージ)があり、そこからウィルスの侵入を許すケース

また、感染の状況(ウィルス侵入前/侵入後など)で、薬の効き方が変わってくる可能性も考えられ、留意が必要となるかもしれない。

どうだろうか。
この仮説は本職の医療関係者から見て、基礎研究や臨床試験で仮説を確認すべき内容となっているだろうか?
また治療計画をたてるにあたり、今の手探りの状況から、可能性として考慮するに値する参考情報となっているだろうか?
一般の方にとっては、この話はまだ検証されておらず、私の妄想レベルの話なので、信ぴょう性については、必ず専門家の意見を聞いて判断して頂きたい。

【2020/04/22追記】
以下のリンクでは、自然免疫の重要性がバリア的に働く仕組みを含め解説されており、興味深く読ませて頂いた。
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050463.pdf

【2020/04/28追記】
以下のドキュメントに「無症候性の SARS 感染者は粘膜上皮のコロニー形成を起こしやすい傾向にあった」との記載あり。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200409_5.pdf