Saturday, June 20, 2020

新型コロナウィルス、症状進行のプロセスを考える

 かなり前に、新型コロナウィルスの無症候感染の仕組みについて考察したのだが、今回は肺のCTですりガラス影が確認されるあたりまでを考察してみようと思う。
 というのも、肺胞の空気が入る側からの感染は、ないことはないのだろうが、症例などの情報を確認していくと、どうも肺胞の欠陥側から感染、もしくは炎症物質を含む血液が流れ込むことで血漿が肺胞の空気が入る側へと染み出しているケースが多いのではないかと思われ、それをまとめておくべきと考えたからである。

 いつものことながら、私は医療の専門家ではないため、恐らく内容に間違いも多く含まれることになると思う。
 このため、真偽については専門家の意見を踏まえた上で、判断して頂きたい。
 もし間違いに気づかれた場合には、ご指摘ください。

①初期感染
 まず、初期感染だが、ACE2受容体のある場所ならどこでも感染可能と考えている。
 TMPRSS2がなければ膜融合が起こらず感染しないのではないかという話があるが、こちらの資料でSARS-COVではあるがウィルスがエンドソームに取り込まれずに膜融合を起こすパターンが確認されており、私は必ずしも膜融合にTMPRSS2が必要とは限らないのではないかと考えている。
 このため、最初の感染場所は、鼻腔・口腔・気管支を含む気道、目の粘膜、食道あたりになるだろうか。皮膚からの感染は怪我などがなければ、ないのではないだろうかと考えている。
 胃や十二指腸、小腸などでの初期感染もACE2受容体があるという点では起こりえるが、通常は胃酸によってウィルスが不活化されると考えられるため、初期感染は起こりにくいと考えている。

②感染後、おそらく無症候、軽症もしくは中等症まで
 感染後しばらくの間は、自然免疫か何かの力によって局所的に感染が進行する期間があると考えている。
 こちらは、以前のブログにまとめているのでそちらを参照頂きたい。
 37.5℃程度の熱が続く期間も、はっきりとは言えないがここに該当するかもしれない。

③無症候、軽症もしくは中等症から
 感染がさらに進行すると、ウィルス、もしくは炎症物質が血液に乗って流れだすのではないかと考えている。流れ出す量の過多は状況によって変わってくるのではないかと考えてはいるが、現時点でそれを整理できる情報を持ち合わせていないため、これについては機会があれば別途検討したいと思う。
 血液は、必ず心臓を通り肺に至る。至ってしまう。
 肺に至ったウィルスが感染を起こし炎症を引き起こす、もしくは炎症物質が肺に到達することで、血漿が肺胞の空気が入る側へと染み出し、肺サーファクタントと結合する。それにより肺サーファクタントが担っている肺胞の表面張力を緩和する作用が失われ、肺胞が潰れ微小無気肺をとなる。
 この微小無気肺が肺のCTですりガラス影として映っているのではないだろうか。
 この微小無気肺が増えることにより、肺が酸素を取り込み二酸化炭素を排出する能力が低下し、血中酸素飽和度が低下し、呼吸不全に進行していく。
 こちらの症例のCT画像に関する考察が、非常に的を得ているように思う。

 サイトカインストームについては、こちらに非常に詳しい解説があるため、こちらをご参照頂きたい。私から申し上げる点としては、このサイトカインストームは感染症の進行のある時点で、その瞬間からウィルスが全ていなくなったとしてもサイトカインストームが起こる条件が成立し、後にサイトカインストームが起こってしまうため、それが抗ウィルス薬の効果を見えにくくしているのではないかという懸念ぐらいである。

 なお、無気肺については私の主治医の先生より、肺サーファクタントについては岩手県の専門家の方に情報を頂いた。ここに感謝申し上げます。

Saturday, June 6, 2020

新型コロナウィルス、BCGの接種が致死率の低下に関与していない可能性

 BCGの接種(特に日本株)が、新型コロナウィルス感染症に何か良い効果をもたらすのではないかという話をご存じだろうか?
 こちらのブログで、BCGの接種と新型コロナウィルス感染症の広がりの広がりの逆相関と、これらが関係するとしたらどういった要素が考えられるかといったことが紹介されており、非常に興味深い内容となっている。

 今回は、この話を真っ向から全て否定する訳ではないが、少なくとも致死率については例え影響があるとしても、これを第一に取り上げる程は強い影響はないのではないかと思われる情報が出てきてしまったので、せっかくの希望に水を差すようで心苦しい部分もあるが、それを紹介しておこうと思う。

 今回は情報のソースとして、東洋経済オンラインの「新型コロナウィルス 国内感染の状況」を利用させて頂いた。
 非常にわかりやすく情報をまとめておられるため、日本の感染情報を確認する際にはまずこちらを確認させていただいている。
 これだけの情報を維持・管理・公開して頂いていることにつき、感謝申し上げる。

 さて、6月3日時点の「年齢別の感染者数」では、感染者数と死亡者数は以下のようになっており、そこから感染者数に対する死亡率(%)と年齢によって、その前の年齢に対して死亡率が何倍になるかという計算を加えたものが、以下の表となる。

年齢 感染者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 1779 354 19.90 1.95
70代 1682 172 10.23 2.83
60代 1882 68 3.61 5.23
50代 2759 19 0.69 2.03
40代 2658 9 0.34 2.13
30代 2559 4 0.16 -
20代 2786 0 0 -
10代 411 0 0 -
10歳未満 284 0 0 -

 死亡率の上昇倍率が、60代の時に他に比べて大きな値(5.23)となっているが、これは50代以前と60代以降の何らかの違いにより、60代から致死率が跳ね上がっているということを示している。
 それに対して、BCG接種は1951年に開始されているため、これが致死率に大きく影響する前提だと、この跳ね上がりは60代ではなく70代で起こるはずではないかと考えるのだがどうだろうか。
 もし、60代で跳ね上がる今のデータで、さらにBCGが致死率に大きく影響すると言うためには、「BCG接種は1951年に開始されたが、10年程度接種率が低かった」などの条件が必要となるだろう。

 では、60代での跳ね上がりの要因は何かということになってくるのであるが、残念ながらまだそれについて踏み込んだ考察はできていないというのが正直なところである。
 データが不足しているため、確度がいまいちだが、今のところこの年代から跳ね上がる要因のひとつとして私が考えているのは「定年退職」である。
 日本の企業はこの年代を「定年」としていることが多いのではないだろうか。
 定年を迎えた退職者にとって、その後今までとは大きく異なる生き方となることの何かが、致死率に影響してしまっているという可能性を懸念している。
 ただ、この懸念が正しいとした場合、恐らくこの年代での致死率の上昇倍率の跳ね上がりは、かなり男性に偏ると考えられるので、各年代の感染者・死亡者の男女比を、まずは確認するのが次のステップになるだろうか。

 また、他の国々との対比で見えてくることもあるのではないかとも考えている。

 進展があれば、こちらに追記させて頂く。

【2020/06/09追記】
 新型コロナウィルス感染症とBCG接種の逆相関のブログの記事のコメントに本記事の紹介をさせていただいたところ、その著者であらせられる大隅典子女史より以下のコメントを頂戴した。
元の論旨は年代ごとの比較ではなく、日本と他国、あるいは世界の中での比較でした。50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。また、そもそも日本では元の死亡数の数字が少ないので、どの程度、統計的に信頼度の高い比較ができているのかは疑問です。別のブログ記事でも挙げていますが、生物学的背景も、BCGだけではないかもしれませんし、社会的要因も大きいので、単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。
 言い訳を含める形にはなってしまうが、私の考えを述べたいと思う。

 まず、統計的な信頼性の話をする前に、この元データの信頼性についての私の考えを述べたいと思う。
 今回、公表されている感染者数と死者数で傾向を確認するための値を導き出しているのは、それが信頼性が高い数値だと私が考えているからである。
 この新型コロナウィルス感染症は、ご存じの通りクラスター対策などが奏功しているとはいえ、見えない感染者というものが不特定多数存在すると考えるのが妥当であると思われる。
 しかしながら、公表されている感染者数は、ある決まった条件のもと結果的に感染者と判断された方の数であるため、その条件を考慮できれば利用するのに非常に信頼性の高い数値として扱えると私は考えている。

 そのような前提があるものの、死者の数が少ないことによる統計的な信頼性の低さ(例えば、今後感染者が増え続けた場合に、今回述べたような傾向は変わってしまうかもしれない)という点は、ご指摘の通りであると思う。
 しかしながら、BCGの日本株の優位性の考察がなされており、しかも日本のBCG接種は1951年に開始されたということであれば、例え信頼性が低くても、このような考察は行っておくべきではないかと私は考えるのだがどうだろうか?
 これは単に私の意識の問題なので、私の考えを述べるだけだが、私はこれから先このコロナウィルス感染症で統計的に信頼性が高くなるほど、日本の死者数を増やさせるつもりはない。
 そのための分析を今行っているつもりであるし、いつでも根拠を示した情報を提供できるように準備を進めているつもりだ。(そういう意味で、この記事は寄り道にあたるため、今この件に関してはあまり時間をかけて深く踏み込むことができない)
 この情報は、その情報が正しいということよりも、手探り状態のものに対して対応を考える際のたたき台にできる情報というものを目指している。
 日本の医療体制と関係者の質なら、恐らくこの情報で十分であるはずだ。
 そういう訳であるから、死亡者数が少なく統計的に信頼性が高くない情報でも、多角的に見るなどの方法で、信頼性を補っていくことを考えている。
 もちろん、この記事の分析のみで何かを断定することはできないし、したつもりはなかったのだが、もしそのような印象を与えてしまったのであれば謝罪させて頂きたい。
 この情報を起点に、新しい考察を加えて頂けると幸いである。

「元の論旨は年代ごとの比較ではなく、日本と他国、あるいは世界の中での比較でした。」という点については、世界を見る際にも「この国は何年までBCGの接種が行われていた」という情報があり、そういった国についてはやはり世代別の観点で考察を行った方が良いと考えている。
 さらっと確認したところ、オランダフランスの情報が手に入ったので、それを同じような表にすると以下のようになる。
 この表は、オランダは6/6、フランスは6/5のものである。
 フランスについては、残念ながら年代別の感染者数が手に入らなかったので、ひとまず累計入院者と死亡者の傾向比較としてみた。
 そのまま国ごとの死亡率の傾向比較に用いるには問題があるかもしれないが、「50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。」の傾向比較には用いてもよいのではないだろうか。

オランダ(6/6時点)

年齢 感染者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 11049 3720 33.67 1.32
70代 6311 1611 25.53 3.16
60代 6076 491 8.08 4.81
50代 8684 146 1.68 3.29
40代 5490 28 0.51 2.04
30代 4324 11 0.25 3.57
20代 4586 3 0.07 0.47
10代 662 1 0.15 -
10歳未満 150 0 0 -
 オランダは、日本ほどではないが同じように60代のところで死亡率上昇倍率のピークが見られる。

フランス(6/5時点)

年齢 累積入院者数 死亡者数 死亡率 死亡率の上昇倍率
80代以上 35707 11001 30.81 1.49
70代 20382 4206 20.64 1.62
60代 17370 2215 12.75 1.91
50代 12970 867 6.68 2.17
40代 7484 231 3.09 1.69
30代 4644 85 1.83 2.14
20代 2455 21 0.86 1.50
10代 526 3 0.57 1.35
10歳未満 711 3 0.42 -
 これをそのまま日本やオランダと比較することはできないが、フランスはどういう訳か死亡率の上昇率の変動が緩やかであるように思われる。
「50代と60代では基礎疾患の罹患率が大きく異ります。」の前提である場合、恐らく入院者数と死亡者数の相関にも影響がありそうに思うのだが、それがないように思われる。
 もし、基礎疾患があると入院の可能性が上昇するため、その影響でこの上昇率の変動が打ち消されているということだと、60代で入院者数が大きく伸びるはずだが、確かに大きくは伸びているものの、50代でも同じように伸びているため、60代での死亡率の上昇が打ち消されていると解釈するにはいささか苦しいように思われるがどうだろうか。
 とはいえ、これで何か確定的なことが言えるわけではないので、この辺りを見極めるために追加の考察が必要という話ではあるのだが。

 ともあれ、このような見方をすることで見えてくるものもあるのではないかと、ここでは申し上げておきたい。

「別のブログ記事でも挙げていますが、生物学的背景も、BCGだけではないかもしれませんし、社会的要因も大きいので、単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。」という点について、私の意見を述べさせていただきたい。
 まず、ほかの要素がある可能性についてはもちろん考慮すべきと考えるが、私はそれぞれの要素について、どういう影響があるのかを限られた情報であっても見極めていくことが必要だと考えている。
 特に、どの要素が強い影響を及ぼしているのかを見極め、影響の強さの順を踏まえて論じることができるようになれば、かなり見通しが良くなるのではないだろうか。

 例えば、「ファクターX」について言えば、恐らく今回のように年齢別にして感染者数などを見た場合に、日本では60代以上の感染者数が低く抑えられていることなどの傾向が見えてくるはずだ。(もちろん他のデータを確認した際に、この傾向が否定されたり、もっと影響度が高い要素が出てくる可能性は考慮する必要がある)
 他の年代の感染者数も確かに少なく、日本の満員電車で何故感染が拡大しないかといった興味深い要素はあるものの、全体に対する影響の大きさで見れば高齢化が進んでいるにもかかわらず、高齢者の感染者数が低く抑えられていることの方が大きいはずで、まずはこの要因を分析し、その後その要因を除外した後に次に影響が大きい要因を特定していくといった感じで進めると良いのではないかと考えている。

 最後に「単純に日本国内の年代別の比較だけで論じることには無理があると思われます。」という点については、「BCGの日本株」がこの感染症の感染率や致死率に強い逆相関をもっているという前提でなければ、全くおっしゃるとおりであると思う。
 逆に「BCGの日本株」がこの感染症の感染率や致死率に強い逆相関をもっているという前提であれば、年代別の比較だけで断ずることは無理があっても、論ずることには無理はなく、むしろこれをきっかけに他の側面からも見るなどの方向に議論が発展しても良いのではないかと考えている。

 以上、頂いたコメントを網羅する形で考えを述べたつもりだが、ご理解いただける内容になっているだろうか?
 年代別に見るということについては、ぜひご検討いただきたい。

以上。